「全館空調」というシステムを聞いたことがあるでしょうか。
公共施設や大きなオフィスビルなどではすでにおなじみの設備となりましたが、一般家庭ではまだまだ大規模な普及には至っていないというのが、まわりを見渡してみての印象かもしれませんね。
正直、贅沢品なのではないか、そこまで必要な設備なのかと感じる人は多いようですが、実際にそうなのでしょうか?
今回は、全館空調とはそもそもどんなものなのかということから始めて、特色や機能、メリット、どんな人に向いているかということを見ていきましょう。
全館空調とはどんなもの?
全館空調とは、建物全体の空調を一括して管理するシステムのことです。
従来はひとつの部屋にひとつのエアコンを配置し、その分だけの室外機も置いて…という「ルームエアコン形式」でしたが、近年はこの全館空調が大きなオフィスビルなどだけでなく、一般の家屋にも組み込まれているのを見るのが多くなってきました。
洗面所やトイレ・浴室など元々は温度管理が難しい空間も、一括して同じ温度に保つことができるうえ、常にきれいな空気を循環させることもできて、快適な生活を送ることができる装置なのです。それが、近年身近になってきています。
全館空調の特色
全館空調の特色を、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
冷暖方式には4つのタイプがある
全館空調のシステムでは、1~2台の室内機で全居室を一括して冷暖するのですが、その室内機を使ってどこから冷暖するかという点で、今のところ大きく4種類のタイプに分けることができます。
・天井吹き出し型
天井の中にダクトを設置し、天井の吹き出し口から冷暖気を送る。一般的な全館空調としてもっとも多く使われているタイプ
・床下冷暖房型
床下の基礎部分を断熱して冷暖気を蓄熱し、床からの輻射熱と送風で冷暖気を送る
・壁パネルからの輻射型
壁に大型冷暖房パネルを設置し、パネルからの輻射熱で家全体を冷暖する
・壁掛けエアコン型
1台の壁掛けエアコンで作った冷暖気を、ダクトや通風口を通して家全体に行きわたらせる
さまざまな機能が1台で実現
冷暖房のほか、換気や空気清浄まで1台でまかなえるため、家電をあちこちに置いてごちゃごちゃする、ということがなくなります。
換気をきちんと行うことは、快適な生活を送れるという要素になるだけでなく、シックハウスなどのリスクからも住む人を守ります。洗濯物を冷暖房の吹き出し口近くに干すことで、生乾きを防ぎ、気持ちの良い乾燥にもつながるでしょう。
花粉やPM2.5といった微粒子も高性能フィルターでキャッチするため、単に空気を入れ替えるというだけでなく、常に空気清浄もされているという状態です。
また、全館空調はダクトを通じて常に空気の流れを生じさせているため、カビや水滴が発生しにくく、したがってかび臭い嫌なにおいも発生しにくくなっています。
1年を通して家全体が快適な温度に保てる
全館空調は、基本的にはスイッチを切ることがありません。24時間365日体制で常に家全体の空調を管理します。
しかも、リビング・キッチン・それぞれの部屋といった居室のみならず、トイレ・洗面所・浴室という常にだれかがいるというわけでもない空間に至るまで、一定の温度を保ってくれるのです。
1年中、そしてすべての部屋が同じ温度に保たれるということは、想像以上に快適な生活をもたらします。たとえば、真夏に2階だけが異常に暑くて寝苦しいとか、真冬の朝に寒くてふとんから出たくないとか、そういった不快さからも逃れることができるからです。
また、このように常に快適に過ごしやすくなるだけでなく、冬場のヒートショックや夏場の熱中症を防止することも期待できます。
ヒートショックとは、部屋と部屋の温度差が原因で起きるもので、たとえばあたたかい居間から突然寒い脱衣所に行き、また浴室で急にあたたまる。これによって急激に血圧の変化が起こり、脳内出血や心筋梗塞などの危険な症状を引き起こすことです。
近年増えているこのヒートショックの防止にも、全館空調は大いに活躍してくれるのです。
家の中がすっきりする
少し前述しましたが、全館空調の場合、従来のようにエアコンやストーブといったものを部屋の中に設置しなくて済むため、どの部屋も凹凸が少ないすっきりとした壁になります。そのおかげで、スタイリッシュなインテリアを実現させることができるでしょう。家具の配置にも制限がなくなります。
室内機はひとつかふたつで済むため、必然的に室外機の数も減ります。家の外にずらりと室外機が並んで美観を損ねる、ということもありません。
また、大きな吹き抜けや、開放感のあるLDKの場合、冷たい空気が部屋の下部にたまってしまうなどの現象で効率よく室温を保てなくなってしまうものですが、全館空調であればこういった問題も解決できます。つねに広い空間全体の室温を効率的かつ一定にコントロールできるからです。
そのため、冷暖房の関係であきらめざるを得なかったような思い切った間取りも、実現することが可能となります。
全館空調は、こんな方におすすめ
季節の寒暖差によるストレスが大きい方
前述もしましたが、「夏は暑苦しくて眠れないのに、冬は寒くてふとんから出たくない」とか、「家の1階と2階で睡眠の快適さが全然違う」とか、生活において寒暖差によるストレスが大きい方には、全館空調はおすすめです。
こういったストレスは馬鹿にできないものがあります。日本は南北に広い国なので、お住いの地域によってもこういったストレスの大小は大きなものでしょう。全館空調で快適な睡眠が手に入るのであれば、何よりですよね。
また、高齢者や小さな子どもがいる家庭も、寒暖差には気をつけたいはずです。これも前述したヒートショックの例があったり、小さな子どもも季節の変わり目の寒暖差で体調を崩すことがあったりといったことが多いからです。
ペットのいる家庭
ペットの健康管理には、温度と室温の設定が欠かせないものです。飼い主が在宅していれば問題ないでしょうが、真夏や真冬に家をあけていてずっと面倒を見ていられない時間などは、心配ですよね。
その点全館空調であれば、飼い主不在でも家全体がペットにとっても快適に保たれるため、自由に部屋を動き回らせることも可能です。
また、ペットを飼っていると少なからずにおいの問題が出てきます。
全館空調であれば、換気設備も24時間365日体制で動いていますので、ペットのにおいも消臭してくれます。
温度・湿度管理、そして換気・消臭機能。これらはペットを飼育する環境においても便利さと快適さをもたらしてくれるということですね。
まとめ
・全館空調とは、建物全体の空調を一括で管理できるものであり、冷暖房だけではなく換気や空気清浄といった機能をすべて持ち合わせている。24時間365日、家の中すべてを快適に維持することが可能である
・全館空調は、寒暖差やにおいなどのストレスに悩まされることが多い人に、特におすすめの設備である。ペットとの生活にも安心がもたらされる
全館空調は贅沢な設備だと思う人もいる一方で、確実にこの快適性を求めている人もいるわけです。
自分の求めるものと全館空調のメリットが合致するのであれば、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。